前回のつづきです。
銃が気付きにくい
ライオネルが地図を盗みにアデリーナの家にしのびこむシーンで細かいですが演出のつっこみを入れたい。
アデリーナとその執事がライオネルを追い払うとき、執事の銃が暴発するというハプニングがあるんですが、この銃がとても分かりにくい。
理由
1:アデリーナと執事が同時に同じ画面に登場する。
2:アデリーナが画面中央で「コソ泥め!」と叫ぶ&ポットを投げるので、観客はアデリーナに注目する。
3:執事は画面のはじ。部屋が暗いし執事も黒い服だし、銃のほとんどが暗くて見えない。
解決策を考える
2人で登場
↓
アデリーナが「何してるの!」と叫ぶ
↓
執事「お嬢様さがってください!」と言いながら銃を構える。
効果音「ガチャッ」
↓
アデリーナが「コソ泥め!」ポットを投げる。
これなら分かりやすいかな。
いや、銃に気づかなくても暴発してエラいこっちゃという流れは分かるのでいいんですが。僕はとにかく分かりやすさが気になるのです。
悪者の最後
クライマックスで、ライオネルを殺そうとする悪者が標高5000メートルから落下するシーンが怖すぎる。
死ぬ3人の内の2人は完全に悪者だから良いとしても、あとの1人はついてきただけの秘書よ。悪いことしてないのに落下してて、かわいそすぎる。ギャグのつもりなのかな。
そして落下してくシーンがしっかり描かれてて素直に怖かった。ミッションインポッシブルとかなら悪役は死んでもしかたなし、って思えるけど、キャラデザがかわいいから悪役もそれほど憎めなくて死なれると戸惑いました。
悪役のアフターケア
もしこの映画がディズニーなら、エンドロールのあとに、崖の木の枝にひっかかってる3人がいて「助けてくれー!ゆるしてくれー!」って黒丸のワイプでピューンってしまる、みたいね、実は死んでませんでした、トホホエンディングがあると思う。
なんか最近は悪役のアフターケアもする時代だと思う。
アデリーナのキャラ設定が納得いかない

それでヒロイン役のアデリーナについて。先ほどちょっと出ましたが、旦那の形見の地図をライオネルに盗まれたあと、微妙に和解してライオネルと一緒に旅にでます。
観客としては「この偏屈なライオネルと勝気な姉御のアデリーナが恋仲になるのかな?」って期待したいのですが、そんなことはなくて、実はアデリーナとライオネルは元恋人って設定なんです。アデリーナはライオネルの性格がダメだってもうわかりきってて、恋の熱は完全に冷めてる。
なにより、ライオネルと別れた後に結婚してて、しかも旦那さんはライオネルの親友で、旦那は死んでアデリーナは未亡人。ライオネルはその旦那の葬式に来なかったことにもアデリーナは怒ってる。そんな関係で一緒に旅をするなよ。
現実では再婚もぜんぜんいいけど、フィクションの世界で、このかわいい雰囲気のなか3角関係を出さないでほしい。ライオネルを好きになっちゃったら、死んだ旦那さんのことは好きじゃなくなったの?ってモヤっとする。そういう人間ドラマとして心の変化をちゃんと描いてくれるならいいけど、この映画にそんな大人の恋をもとめてないよね。
アデリーナは心変わりしなくない?
なんだけど、そんなアデリーナがライオネルといい感じになるシーンがあるのもモヤる。
このシーンの前でも後でもアデリーナは「あなたって自分のことばかりね!」って怒るんだよね。
普通のストーリーとして、ライオネルが旅の中で改心してアデリーナが惚れ直すならわかるけど、そうじゃなかった。なんか旅の途中にとつぜん見つめ合ってていい雰囲気になってる。
彼を好きになるきっかけってあった?
あと細かいこと
・アデリーナが一緒に冒険に行くって言い出す気持ちが理解できない。心境の変化を描くシーンあったっけ?
・リンクの性格もよくわからない。頭が良かったり悪かったり。頭が悪いシーンはギャグとして描いているんだけど、それにしては礼儀正しかったり人間と同じような清潔感を持ってたりちぐはぐに感じる。
・ライオネルも性格悪くて物を壊すし、リンクもドジキャラで物を壊すし、なんかキャラのコンビとしていまいちな気がした。デコボココンビではなくボコボココンビ?似たもの夫婦みたいなことなのか?
・馬車で旅をはじめるときに、目の前にすごい雷雲が見えてるシーンがあるのに、次のカットで普通に目的地に着いてて、嵐の意味がなかったのが気になる。気にしすぎか。
最後に気になる映画のテーマ「本当の居場所探し」
この映画のテーマは「本当の自分の居場所探し」だと思います。
ライオネルは貴族クラブこそが自分にふさわしい場所だと思っている。
リンクも自分の仲間・居場所を探してヒマラヤ山脈を目指す。
最終的にリンクもライオネルも求めた場所から拒絶されてしまい、居場所探しは失敗する。アデリーナからも「あなたもリンクも間違った場所に居場所を求めている」と指摘される。
最終的にライオネルとリンクは2人で探検家コンビになって映画がおわる。居場所を自分たちでつくるというハッピーエンド。
これは「主人公は自分の間違いに気づき、あたらしい道を歩む」という映画の王道パターンの1つ。
なんだけどー、なんだけどなー、なんか見ててモヤモヤしたんです。ここから書くことは、ぼくも結論でてなくって本当に誰かと議論したい。
まずは最初に目指してる居場所がよいものなのかどうか。
悪役のピゴット・ダンスビー卿について
貴族クラブに入るためにはクラブのリーダー、ピゴット・ダンスビー卿に認められる必要がある。
ライオネルは「サスカッチを発見したらクラブに入れてもらえる」という賭けをダンスビー卿とします。しかしダンスビー卿はキリスト教徒で「人は神がつくりしもの。猿から進化したなんて証拠があっては困る!」といって殺し屋にライオネルを殺させようとするのです。悪いやつ!(劇中ではキリスト教とは言ってないと思うけど)
これが映画の序盤のシーンなので、ダンスビー卿が悪役だと最初から分かる。ライオネルもダンスビー卿が悪いやつだと気づいている描写がある。
なのでダンスビー卿は主人公の目指す存在(=居場所)ではなく、倒すべきライバルとなる。ここまではいいです。
そうなると「ダンスビー卿の鼻を明かして、貴族クラブに入ること」が目的なんだけど、貴族クラブそのものは目指す場所としてふさわしいのか?が気になります。
貴族クラブの他のメンバーが全然しゃべらないからみんな何を考えてるのかわからない。ここでも「しゃべらないからキャラがよくわからない問題」が浮上してると思う。どちらかというと他のメンバーはダンスビー卿の言いなりっぽく見ます。
クラブのメンバー全員がキリスト教徒だったらサスカッチを発見出来ても、誰も認めてくれないってことになる。科学を信仰しているライオネルにとってダンスビー卿もクラブも目指すべき居場所ではない。それが観客には最初から分かるんで、なんとなくライオネルを応援しにくい、というのがぼくの感想です。
「名誉のため」ってことばがちょっと邪魔してる気がする。
そして、本当のライオネルの目標は「名誉がほしい」ということ。貴族クラブに入ったら名誉だと思っている。
名誉欲のつよい男がその欲をすてる話も王道なはずですが、「名誉なんて自分のためだけに行動するのはよくない」とアデリーナに何回も指摘されて、改心するのがやはりモヤっとする。
アデリーナは名誉欲の問題も居場所の問題もぜんぶ指摘してくれる。人に叱られて行動をかえるなよ。できれば自発的に変えてほしい。
それで、主人公の間違い部分をまとめると
・ダンスビー卿という倒すべき外側の悪
・名誉欲という乗り越えるべき内側の悪
・自分の居場所という貴族クラブはやや悪っぽい
という感じに主人公の目標と問題がいくつも重なってブレていて、主人公を応援する気持ちになりにくかったんだと思います(僕的にね)。
そこで思いつきですが
こういうパターンはどうでしょう。
最初はダンスビー卿も貴族クラブもいい存在に見える。
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ライオネルはクラブを目指す。観客もそこが彼にふさわしい居場所だと思って冒険を応援する。
↓
物語の終盤、クラブは進化論の否定者の集まりだとわかり
↓
クラブのメンバーが大勢やってきてリンクを殺そうとする!大ピンチ!(そしてクラブ全員が悪だと明確にわかる)
↓
ダンスビー卿が「リンクを差し出せばクラブにいれてあげよう」ともちかける
↓
ライオネルは「クラブは私の居場所じゃない。名誉なんていらない」と言いはなち
↓
リンクを命がけで守る。
↓
リンクが殴るかしてクラブのメンバーは酷い目にあう。
みたいな、「名誉欲」と「親友リンク」を天秤にかけるストーリーがあって、悩んだ末に名誉欲を捨ててリンクを守る、というのダメですか?
いや、ここに書いたのはベタなパターンすぎるかもしれないけど、なんというか、主人公の決断とか改心はこういう事件やアクションといっしょに描いてほしい。
モロモロの事件が解決した後に、人に叱られたから改心しました、なんて地味な展開に納得がいかないのかもしれません。
以上です。
ながながとご清聴ありがとうございました。
はぁ〜、何日も書いてて疲れました。
この映画は劇場で1度見て、そして今年の1月にNHKで吹替放送があって(日本語声優は良かった)、劇場のときに感じたモヤモヤをテレビ放送で再確認して、この原稿を書くことにしたのです。
好みの問題もあるし、この映画の作者たちが「あえてそうした」っていう箇所もあると思います。この記事に「その解釈ちがよう!」って人もいるでしょう。
ぼくの指摘が的外れなこともあるかもしれないけど、気になった物を言語化しないと気が済まないたちなのです。
『ハンター×ハンター』の冨樫義博先生も「映画を見ながら、自分だったらこうするというのをメモする」的なトレーニング方法をおっしゃってましたし。
(『ヘタッピマンガ研究所R』より)
これも自分のトレーニングのつもりです。
みなさまの感想や意見などもらえたら嬉しいです。
それではまた。次の映画で。
