Netflixの『地面師たち』がよかったので書きます。

見てない人にも分かる様に書きます。序盤の設定だけネタバレして解説を書いていき、ネタバレ感想はブログの最後に少し書きます。
設定・地面師とは
地面師というのは土地の売買で詐欺をはたらく詐欺師のことらしく、このドラマ(原作小説)は実際にあった積水ハウス地面師詐欺事件というのを元にしているらしい。ドラマでは100億円をかけた詐欺をするんだけど、もとの実話も55億円を騙し取られたらしく、びっくりしました。
その地面師たちの活躍(?)を描いたドラマ。
地面師たちは役割分担をしており、司法書士、交渉役、キャスティング役などあって、そういう裏社会の知識が知れるのも面白いです(どんだけフィクションか知りませんが)
主人公の綾野剛は地面師グループの交渉役を担当。でも実は数年前に地面師たちの不動産詐欺にあい、その結果家族を失っている。その犯人を探すために地面師をやっているというストーリー。
どうでもいいけど、タイトルの「たち」っている?
グループの犯行ってことで必要なのかな。『地面師』だけのほうが語呂がいい気がする。
では、ストーリー演出の考察はじめます。
悪いやつにはバチがあたってほしい
このドラマの良いとこ、というか配慮されてるのかなと思ったのは「詐欺被害にあう人ももれなく悪いやつ」ということ。
不動産詐欺を進めるために、ターゲットの人だけじゃなくその周りの人たちも地面師の罠にかかっていきます。
でも詐欺にあう不動産関係の社長や、罠に落ちていく人たちも、みんな浮気をしてたり売春してたり犯罪まがいのことをしててヤバい人ばかりなんですね。なので詐欺のカモにあっても「悪いことしていい気になってるやつにバチがあたった」となるので、視聴者はスッキリできるのです。
被害者が善人だと「可哀想」と思えて、主人公たちの活躍を追いかけられない。
詐欺グループは悪ですが、観客としては「どうやって詐欺をするんだろう?」という気持ちがあって、詐欺計画は成功してほしい気もする。悪が悪をだます話なら応援しやすい。
現実世界では善人ほど詐欺にあうわけですが、ドラマで善人に不幸がおそいかかると悲しくなったり怒ったりモヤモヤしちゃう。リアルを描いているって言えばそうですけど、娯楽として見たいときは、いい人は救われてほしいし悪い奴はやられてほしい。その点でこのドラマは良かったなと。
この点が『ミッシングリンク』ではダメだったと思う。(前回記事)
ホラー映画は
ちなみにホラー映画でも、最初にモンスターの犠牲になるのは、バカ騒ぎしてイチャイチャしてるヤンキーカップル、というセオリーがあります。殺されてもしかたないわと思わせる。そして、善良なヒロインが生き延びる、というパターン。
でも日本のホラー映画だと善良な人も殺されるから、海外の人はそこにビビったんですって。無差別な感じがより怖かったと。ホラー映画はそれでも良いです。胸クソ悪い気持ちになりたくて見るわけだし。
ストーリーがどっちに転ぶか分からないのがイイ!
あと地面師で面白いと思ったのは、主人公たちの詐欺計画が上手くいくかどうか分からないところ。
詐欺の計画を進めていきますが、トラブルも多発します。どうするんだよ、失敗しちゃうじゃん!の連続です。それと同時に警察も徐々に主人公たちに近づいてきます。
このとき、主人公の綾野剛は根っからの悪者ではなく、むしろ詐欺グループを捕まえたい気持ちがあるので、この計画が失敗してもいいし、むしろ警察にバラしても良いはずです。
これが『オーシャンズ11』とかなら「どんなトラブルがあっても主人公たちが勝ちそうだし、爽快な逆転劇を決めてほしい」と思います。そういうのを求めて見る。主人公たちもおしゃれでかっこいいし。
でも『地面師たち』の詐欺メンバーは、完全に悪いやつだし逮捕されても当然って感じがあって、だからこそ結末どうなるのか分からない感じがあって良かったです。
計画がどうなったか、詐欺グループがどうなったかは未視聴の方は是非見てください。僕はそれぞれのメンバーの終わりかたも納得のいくものでした。
爆弾の見せ方もよかった。
ちょっと小さな演出の話を。
終盤で爆弾が出てきます。そのデザインがスマートな黒いデザインの爆弾なんですね。アボカドみたいな手榴弾だったら見慣れてるけど、これはそうじゃない。
それが、終盤の大事なシーンででてきて、周りの人が慌てるのですが、この話のちょっと前にも使うシーンがあって、爆弾も爆発もちゃんと見せてて「これがヤバい爆弾です」ってのを視聴者にしっかり示します。
そうすると、次に爆弾が画面にうつった瞬間に視聴者も爆弾だって慌てる。
爆弾が出たらその場のキャラたちは迅速に対応しないといけない。そのスピードに視聴者が置いてかれないように、事前に爆弾を見せたんだと思います。おかげでテンポの早い演出ができる。
もし1回目がなかったら、爆弾が出たとき「爆弾だ!」って説明セリフを言わないといけない。これはちょっとダサいし、ワンテンポ遅れる。そうならないために、デモンストレーションとして先に出したんじゃないかな。
考えすぎかな。
北村一輝さんが最高だった
詐欺グループの1人の北村一輝さんの演技が最高でした。
ヤク中のキャラなんですが(シャブ中だっけ?)、目がキレまくってて最高でした(笑) 昔って北村さんて変人の悪役キャラよくやってましたよね。なんかイメージですけど、ナイフをべろーんって舐めるようなキャラとかサイコパスみたいなやつ。そんなの多くなかった?それで売れてからは朝ドラですてきな父親役やってたりしてて、それはそれで良かったですが久しぶりに最高な悪役っぷりが見れて楽しかったです。
見た人向けに書くけど、最後の方の話でスローモーションでゆっくり北村一輝さんの顔が見えてくるカット最高でしたよね!あんなキレッキレの表情は漫画でしか見たこない。ハイDio様か!ってくらい。いや、漫画を超えてた。あれに勝てる顔はないと思う。よかったです。
いやいや、ほかの役者さん、綾野剛さん、豊川悦司さん、小池栄子さん、ピエール瀧さんも全員すばらしかったです。僕が悪役好きなだけですけど、役者さんって悪役してるほうが魅力が増すよなーって思ってます。
ここからネタバレの感想を書きます。
それぞれの終わり方
地面師のメンバーのピエール瀧と小池栄子がハリソン山中(豊川悦司)に殺されるのは、悪い奴はやられてほしいという観客の気持ちを満足させつつハリソンの残忍さを出している。
そしてハリソンが生き延びて、のうのうと趣味の狩りにいって終わるエンディングは、ハリソンのキャラクターを描きつつ、この世にはまだ地面師とか詐欺師がいるんだぞという警告な気がします。実際にいるわけだし。
詐欺師は全員捕まえて一件落着めでたしめでたし〜、で終わったら脳天気すぎると思うので。
以上です。地面師たち、とても面白かったです。
余談
さいきん、似顔絵に挑戦中です。
