『ミッシングリンク 英国紳士と秘密の相棒』というコマ撮り映画があります。これについて書きます。
ライカ スタジオ
製作したのはアメリカのライカスタジオというコマ撮りスタジオ。ライカはモーションコントロールカメラや3Dプリンターを使ったり、CGとコマ撮りを組み合わせたり、とにかく最新技術が半端ないスタジオです。
ご存じない方、ぜひメイキング動画をご覧ください。
メイキング
すごいですねー。ため息だしすぎて酸欠になりそうですね。セットがでっかいのなんの。0:45からの馬車のシーンでは馬車がちょっとずつ揺れるコマ撮りをしてますね。あと、リンク(お猿さん)の後頭部にT字の棒がささってるのはたぶん体を触らないでアニメートするためですね。毛束が動いちゃうのかも。
でも、不満がある
ぼく個人の感覚ですが、出来上がったシーンが3DCGっぽいセンスだと思ってて、申し訳ないんですが大好きとは言えないスタジオです。
とはいえ「ライカ作品を見てコマ撮りをはじめました!」って人もけっこういるので、その功績はすごいなと思っています。
そのライカが2019年につくった映画『ミッシングリンク』について、脚本と演出に不満があるので勝手ながらつらつら書きます。
批判だなんて何様だって感じですが、結論でてないことも多いので、だれかこの記事を読んだら僕と議論してください。長文です。すいません。しかも悪口みたいなものだから、ライカ好きの人は読まない方がいいでしょう。
ただの悪口じゃないよう、自分なりに考察とか別案とか考えました。
それでは始めます。
※この記事は序盤から終盤までのネタバレをたくさん書きます。
ライオネルはもっと頭が良くないとダメじゃない?

主人公のライオネルはUMA(未確認生物)を探している冒険家。ただし、それは自分の名誉のためにやっている。自分でもそう言っているし、目的のために他人を利用する自分勝手なイヤなやつです。
監督のインタビューで「主人公のキャラクターはシャーロックホームズみたいな、イヤみを言ったりヤなやつだけど好きになるキャラを目指した」ということを言っていました。
これにツッコミがあります。
主人公に必要なのは卓越性
ホームズは頭脳明晰だから読者は憧れるし、ホームズの仕事は探偵なので基本的に困っている人を助けるいい人。だからワトソンに嫌味をいっても好かれる。
でもライオネルはドジも多いし、頭がいいシーンも特に無い。やる気はあるけど情熱家ってほどではなく世間を小馬鹿にしている感じがあって、卓越性がないのでただのイヤな奴になっている。憧れや共感する要素がないと好きになれないんですが。
ちなみに「主人公に必要なのは卓越性である。卓越性とはパワーか頭脳か優しさのどれかである」という考察がサイト『物語の才能』に詳しいです。とても参考になります(書籍の方だったかも)
ライオネルの性格が1番ひどいシーン
映画見てて「ライオネルってヤなやつだなー」って何回も思うんだけど、1番ヒドイシーンが地図を盗むシーン。
冒険に必要な地図をアデリーナという女性が持ってて、彼女との交渉に失敗したらすぐに盗むって決めて(最初から盗むつもりだった感じすらある)、夜中にアデリーナの家の壁をぶち破って、窓ガラスを割って、金庫を爆破して、彼女の目の前で地図つかんで高笑いして走り去ってった。
しかもその地図はアデリーナの死んだ旦那の形見で、そんな大事なものを笑いながら持ち去るライオネルって性格悪すぎるんだけど。みんなどう思ってる?
主人公がイヤなやつのパターンはある
でもでも主人公がイヤなキャラって映画はよくあるので、それがダメというわけじゃない。『ミニオン』の怪盗グルーも『シュレック』のシュレックもイヤなやつだ。
主人公の悪い考えがなおるストーリーは王道パターンの1つだ。ライオネルの何がイヤなんだろう。なんかライオネルはちょいちょいかっこいい台詞を言ったり、優しさを見せたりしてて、なんかそのバランスに僕が納得いってないのかも。
イヤなキャラには性格いい相方を。
イヤなやつが主人公の時は、たいていそれに振り回されるか、ツッコミを入れるまともなキャラが隣にいませんか。
『ミニオン』だと三姉妹とか?『シュレック』だとドンキーとかフィオナとか。
あと思いついた例。
わがままなお嬢様と優しい執事、とか。
能力高いけど性格最悪の上司と、優しさと元気がとりえの新人社員とか。
悪いキャラにふりまわされる人や、常識的なツッコミをする人、それが観客の視点になる。
でも、この映画のメインキャラはどれも観客の視点にはならない気がするんだよね。
うーん、アデリーナという女性が旅に同行するけど、アデリーナについては後述。
リンクとの出会い

ライオネルがサスカッチ(ビッグフット)のリンクと出会って、この物語が動き出します。
流れはこんな感じ。
ロンドンのライオネルのもとへ「サスカッチがいる」という手紙が届く
↓
その手紙の住所のアメリカの山奥に行くと壊れかけの家が見つかる。
↓
周りを見ると森の奥にサスカッチの影が見えるが、サスカッチは逃げていく。
↓
追いかけるライオネル。
↓
森の中の開けたところで立ち止まるサスカッチ。
↓
風が吹いてライオネルが持っていた手紙が飛んでしまい
↓
それをキャッチするサスカッチ。
↓
サスカッチは手紙を読み、ゆっくりとふりかえり、人の言葉で挨拶を始める。
↓
サスカッチ(のちにリンクと命名)はなんと人語を理解していて、手紙を書いたのはリンク本人だった。
そしてリンクはライオネルにお願いをする。「自分は1人ぼっちで、仲間を探しに行きたいのでヒマラヤに連れてってほしい」と。ヒマラヤに類人猿の伝説があるのだ。ライオネルは協力する代わりにサスカッチがいる証拠として毛や爪などを提供してもらう約束をする。
こうして2人の旅がはじまる。
なんですが、色々と突っ込みたい。
・ライオネルが追いかけるときに「待ってくれー!」って言うけど、サスカッチ(しゃべれない)と思ってるなら言葉をかけるのが変な気がする。「待ちやがれ!」くらいのほうが良いのでは?
・リンクはライオネルを待っていたのに、逃げ出すのはおかしくないか。
・リンクが勘違いして「撃たれる!」とかって逃げたなら、そのあと自分から立ち止まる理由がない。
・リンクは手紙を見てから立ち止まるべきなのに、立ち止まってから手紙をキャッチしている。

・風でとんだ手紙をリンクは見ないで(後ろ向きで)すばやくキャッチする。その動きがカッコイイ達人感があって、リンクのキャラとずれてる気がします。
それなら、手紙が顔にかぶさってあわてて転ぶとかの方が似合うと思う。立ち止まるきっかけにもなるし。
・手紙を読んでからは2人ともすごい落ち着いて会話をしてて、出会いのシーンとしての面白みがない。もっとドタバタすればいいのに。
ドタバタしてほしいから別案かんがえました。
もう好みの問題だと思うけど、子供向け映画でドタバタするの好きなんですよ。(この映画は子供向けにつくってないって監督いいそうだけど、だったらこのキャラデザとストーリーがこれじゃないと思う)
それに最悪の出会いから仲良くなるストーリーってイイじゃないですか。
だから別案としては、
リンクはライオネルを見て「悪い人に見つかったら殺される!」って勘違いする
↓
リンクは怯えてあわながら逃げてる
↓
追いかけたライオネルがすべって転ぶ(ダサい感じで)
↓
この人は危なくないかも?ってリンクが恐るおそる近づく
↓
手紙をみつけて
↓
「ライオネル!?ヤッター!!手紙が届いたんだー!!ヒュー!!」くらい大喜びのリアクション
これどうでしょう。
いままでリンクが寂しかったことと出会えて嬉しいの落差があっていいんじゃないかな。
でもこの映画だとリンクは黙ってスタスタ逃げるから感情がみえないし、出会ってもなんか冷静に会話してるんだよね。それが不満。
もっとドタバタさせたいから別案B
ライオネルが森に到着
↓
「もしかしてライオネル?」とリンクが森から飛び出してくる
↓
ライオネルが「食べないでくれー!」って叫んで逃げる
↓
リンクが追いかけながら「だいじょうぶだよー、食べないよー」みたいに話しかける
↓
ライオネルはそれにしばらく気づかないで逃げ続ける
とかどうですか。うん、こっちの方が好みだわ。子供っぽすぎるかな。でもドタバタ逃げるのって子ども笑ってくれそう。
無言で乱闘しないでほしい
つづいて気になるのが酒屋のシーン。ライオネルの計画を邪魔する殺し屋がやってきてライオネルと殺し合いになる。そして、まわりでカウボーイたちの乱闘さわぎがおきる。(映画の時代設定は1886年です)
(何人ものカウボーイが乱闘するのはすごいんですが、コマ撮りかわからないです。『KUBO』でもモブキャラはCGだったらしいので。このシーンはどうなんだろう。)
周りの男たちはザ・荒くれ者って感じのキャラなんだけど、この男たちが無言でなぐりはじめるのが気になりました。
人と人がぶつかるってきっかけがあるんだけど、見つめ合って「殴ろっか」みたいな雰囲気ではじめてる。
ぶつかったら「やりやがったな!」くらい言えばいいのに。黙ってるから怒った感じとか、荒くれ者感が弱い。
乱闘はこういう流れじゃダメですか?
殺し屋の攻撃をよけてライオネルがカウボーイAにぶつかる
↓
Aが怒ってライオネルにむかって酒瓶を投げる
↓
瓶がカウボーイBにぶつかる
↓
Bが怒ってAに殴りかかる
↓
Aがヒョいと避けて、カウボーイCにパンチ。
みたいな事故の連鎖とかあったら笑えるし、乱闘になる流れもスムーズな気がした。
「荒くれ者はちょっとのことで殴り合いはじめるキャラだよね」っていうパターンをそのまま使ってる感じで好きになれなかった。
僕の別案もよくあるパターンですが、ケンカになる理由がちゃんとみえると思う。どうだろう。
人の頭をだまって踏まないでほしい
もっと気になるのが船のシーン。旅が進んで船の中でライオネルと殺し屋が戦うシーン。嵐で船がすごい傾きます。最後には船が90度横になって、2人は船の壁を走り回ります。このシーンすごいです。
たしかコマ撮りのセットを傾けながら撮影してるはずですが、アニメートしてたら酔っちゃいそうって思いました。
ただ、ここも残念に思ってまして。
まず話の流れ
殺し屋に狙われてライオネルは船内をにげる。
↓
船が横倒しになり、2人は壁を走る。
↓
すると、他の乗客たちがドアを開けて顔を出す。
↓
ライオネルは乗客の頭をふんづけて走る!
何が気になるかというと
このときも黙ったままなんです。もったいない。なんか喋ればいいのに。
・「ごめんねー!」って言えば、良い人。
・「ちょっと頭を借りるぜ!」なら悪い人。
でも無言だからライオネルがどういう気持ちで踏んでるのか分からない。
(たぶん、平気で人をふみつけるやつっていう演出なんだと思う)
そこで思いつきですが
「裸の美女がいるぞー!」ってライオネルが叫んで
↓
男たちが「裸の美女だって?」って顔を出す
↓
そのニヤケ顔を踏みつけて逃げる
↓
「ゴメーン見間違いだったー(笑)」と去る。
↓
ドアがたくさん開いてるので殺し屋が追いかけるのが難しくなる。
これなら主人公はズル賢いし、踏まれた男たちもエロいから痛い目にあってもしょうがないか、って雰囲気になる。
そういうのもないから、踏みつけられた人がただの被害者でかわいそう。
ピクサーとか最近のディズニー映画だと、悪い目にあうモブキャラにも「バチがあたってもしょうがない」って思わせるような悪者っぽさを描いていると思う。
あとは、アクション的にすごい面白いシーンなのに、2回しか踏んでないのももったいない。8人くらい踏み続けて「ギャッ」「ウゲ」「ワー!」「ヒー」「ピヨッ♪」とか連続でやればもっと面白いと思うんだけどなー。アニメートさらに大変になるけど。もっと見てたい。
長すぎたので
記事を2つに分けます。
後編こちら
