



カムカムエヴリバディのOPを作って
1月もそろそろ終わり。
寒いですね。東京でも7日に雪が降りました。
去年の1番の出来事はNHKの朝ドラ『カムカムエヴリバデイ』のオープニング映像を作らせていただいたこと。それについて個人的な思いとかを記しておこう。
【経緯】
この話が来たのは3月。NHKの担当者さんのほうに「ペーパークラフトのコマ撮り」という案がありました。理由があって、このドラマの主人公は3人、3世代の話なので時代がどんどん進みます。女優さんをOPに出すとドラマ部分とズレが出る。ペーパークラフトのキャラクターなら抽象化ができるだろう、ということでした。
企画を考えるために2人の助っ人を呼びました。1人目はいつも僕が美術をお願いしてるハタデコラティブアートの小林郁子さん。もう1人はグラフィックデザイナーの伊佐奈月さん。こちらは初めましてで、キラメキのプロデューサー増田くんが呼んでくれました。
【3つのアイデア出し】
助っ人とプロデューサーと4人でブレスト。最初はペーパークラフト以外の案も考えました。中島みゆきの『糸』の歌みたいに人生というテーマを糸や布で表現できないかと。でも布のコマ撮りにすると洋服屋のドラマだと誤解されるということでやめました。最終的にペーパークラフトで3案を出すことにしました。
1案目、ペーパークラフトで立体的なセットと人形を使って、いろんな家庭のラジオのある風景を描く。
2案目、紙の人形がちゃぶ台やタンスの上を歩いていく、『オオカミとブタ』に似た手法。
3案目、切り絵のシーンをいくつも重ねて最後に輪っかの世界にする案。
【アイデア出しの仕方】
3案を提出することが決まってからプレゼンまでの2週間は3つの案それぞれにどんなシーンが作れるかアイデアをひたすら出しました。この仕事は競合プレゼンだったので受からないと作らせてもらえません。NHKは好きだったし、どうしてもやりたい仕事だったので今までで1番必死になりました。
毎日思いついたシーンをイラストに描きました。1日にいくつも思いつけないので毎日がんばりました。アイデア出しは長時間を1回するより毎日ちょっとずつやる、というのが自分にはあってるかも。
アイデアを絵に描くのも良かった。翌日に絵を見ると新しい気持ちで見直しができるし、その絵から新しい発想もでてきます。自分のアウトプットをインプットにできる。
一晩寝るのも効果あると思います。脳は寝てるあいだにシナプスを組み替えて最適化するって話があるから、アイデア出しと睡眠を繰り返せば、よりアイデア出しに最適な脳になるかも、と思ってます。こんな感じで自分の頑張り方が分かってきた気もします。
そして描いたイラストをスタッフに見せて感想をもらったり。色々な年齢のスタッフと話して、どういうシーンがあると嬉しいか聞いたりしました。
プレゼンは本来ならシーンをいくつか描いてあとは文章で説明するだけでも良いのですが、僕は3つ案どれも90秒分のコンテをしっかり書きました。僕のコマ撮りの面白さって細かいアイデアの積み重ねだと思うので、そういうのを90秒に詰め込まないと面白さが伝わらないと思ったのです。
その中で輪っかの案は僕たちも一番気に入っていたし、NHKの方にも非常に好評でした。カムカムのロゴデザインも丸いので丸が重なるところも良かったですね。
【制作】
美術はハタデコラティブアートの小林郁子さん。カメラマンは市川森一さん。ここはいつもお願いしているスタッフ。アニメーターは僕。
編集は市原賢治さん。市原さんとはちょっと前にお仕事で一緒になって「この人のAfterEffectsスキルなら今回の映像が作れるだろう!」と思って頼みました。とても楽しいチームでした。みなさん、ありがとうございました。
【反響】
11月1日に放送がスタート。「すごいね」や「知り合いに自慢したよ」と言ってもらえて、やったかいがあったなと改めて思いました。母親とこにも母親の友達から「竹内さんの三男さんすごいですね、私も元気をもらいました」ってLINEが来たり、母親のともだちの間でカムカムを見ることが盛り上がってて楽しいみたい。
自分が頑張ったことでまわりが喜んだり幸せになってるのが、ちょっと不思議な気持ちです。
ちなみにドラマは録画して見てます。忙しくて見れないこと多いから放送からだんだん引き離されてますけど。あと数ヶ月カムカムエヴリバディをよろしくお願いします。
【 カムカムエヴリバディOPを作って 】
2022.01.25