私はモモになりたい。

本を1つ読んだので書きます。
『愛と癒しのコミュニオン』
鈴木 秀子 著

Amazon『愛と癒しのコミュニオン』

この本はコーチングの越智さんの先輩の方から薦められた本でして、コーチングの人たちが何をしているのかが書いてあると。コーチたちはかなり色んな手法を使ってコーチングをしていると思うんですが、その中の傾聴について書いてあるといわれて読みました。

かなり派手な言い方になりますが、この本には人が確実に幸せになる方法が書いてあります。もし全人類がこの本にあることを実行できたらこの世界は数倍優しく平和なものになるはず。こんな書き方すると宗教にはまっちゃった人みたいだなって自分で思うけど(笑)
ですが、この本の前半に書かれたものは宗教や精神論というよりはスキルやノウハウとして実行可能な方法が書いてあって、それが結果として人の心に平穏をもたらせるものだと思います。
後半は魂のつながりであるコミュニオンについて書かれていて、ここはかなり宗教的。魂や愛や祈りについて直感的に理解できない人にはなじまないかも。なじまなくてもやがて理解できるようになるとは思うけど。

それよりも前半にでてくる「アクティブリスニング」と「天使の観察」については宗教とかではなくスキルだと思う。禅と同じ。考え方の話であって、すべての人がトレーニングで身に付けれるものです。できればこの本を買って読んで欲しいので全部は書きませんが、この「アクティブリスニング」と「天使の観察」は僕自身がこれまでなんとなくやってきたことだし、コマ撮りのアイデア出しのときにもやっていることだと気付いたので軽く紹介しておきたいのです。

アクティブリスニングとは人の話をどうやって聞くかというやり方なんですが、ミヒャエル=エンデの『モモ』という本はご存知でしょうか。灰色の男たちが人々の時間や心の余裕みたいなものを奪ってしまい、主人公のモモがそれを取り返そうと冒険するファンタジー児童文学。読んだことない人は読んだらいい。

その中で本筋とは別で、モモが持っている特別な能力というのがでてきます。それが「人の話を聞くこと」というもの。悩みを抱えている人がモモの前にやってくるとその人自身が自分からどんどんと話をしてしまい最後は自分で解決策を見つけれるようになるというもの。モモはアドバイスをするでもなく、その人の話をただじっと聞いているだけ、というエピソード。

『愛と癒しのコミュニオン』にも『モモ』のこの部分について書かれています。

僕はモモを読んだことがあったので、この話がすっと理解できました。
アクティブリスニングとは人の話を聞き続けることで、最終的に話し手が自分で問題の原因に気づき解決策を自分で見つけれるようになる手法です。

じゃあ、具体的にアクティブリスニングは何をしているかというと、一切の意見を言わずに「うんうん」という相槌だけをするものです。「それは良いね」とか「それは良くない」「こうしてみたら?」みたいな意見は一切言わない。相槌か「そう思っているんですね」という確認くらい。見た目としてはそれしかしていない。でも人はそんなことは簡単にはできない。話を聞いているときは、相手の話について色々と考えるし話の内容に喜んだり不快に思ったりしてしまいます。アクティブリスニングの聞き手はそのとき何をするかというと、相手の話に対して自分の心が色々と反応しているのをひたすら見続けます。この著者の鈴木秀子さんは(よくは知りませんが)キリスト系シスターらしいので天使という言葉を使って「天使の観察」という言い方をします。つまり自分の斜め後ろくらいに天使がいて、その天使になったつもりで自分を見つめ続けるということ。自分がいま楽しそうか、相手の話に不快感を抱いているかなどなど、ひたすら天使の視点で自分をみます。天使という言い方をしているけど、これはつまり自分の客観視。

共通しているのはアクティブリスニングも天使の観察も目の前に起きていることに対して良い悪いの判断をしないこと。アクティブリスニングだったら話し手の内容に対して善悪の判断をせず、ただ話すのを促すだけ。天使の観察なら聞き手である自分の状態に良い悪いの判断をせず、客観視の結果を心で報告するだけ。判断をしないし、結論を出そうとしない。

これは禅の瞑想と同じことだと思いました。本書でも仏教や瞑想についてふれています。僕は瞑想の本も読んだりして簡単なものを何度かやったことがあるんですが、瞑想している時はいろいろな考えごとが浮き上がってくるのですが、それをすべて横に置いておくということをします。良い悪いの判断をしない。

アクティブリスングなら話し手が自分で話をつづけていき、結論を出そうとしないので話題はうろうろしていくのですが、その結果、出てきたエピソードには共通のテーマや問題点があるのがわかり、自分が本当に気になっていたことや自分の考え方を決定付けた思い出に気づいたりするのです。原因に気づき、それとほぼ同時に、そこで自分がどうしたらいいかに気づきます。これはコーチングをうけた僕の実体験としてあります。問題の原因と解決方法は話し手自身が発見するんです。

「天使の観察」の方は話を聞く時以外も日常生活の中でもひたすらしていきます。すると、自分がどういう時に何を感じるか、どういう時に自分がどう振る舞うかを観察できます。そしてそれは自分の行動の1つひとつがどういう自分の気持ちから発生したものかが分かるようになり、自分が何を考えているかが分かるようになります。自分の考えと行動の因果関係がわかると、究極的には「他人によく思われようとする行動、見栄を張る行動、愛されようする行動」をやめて自然体で生きていけるようになります。そして終いには、他人に愛されようとしないが故に自然に振る舞えるようになり結果として他人に愛されるようになる。この結論がなかなかやばいと思いました。素を出す人は愛されるというのはわかっていましたが、その素を出せるようにするテクニックが天使の観察にある。他にも方法はあるかもしれないけど、僕は今のところこれがもっとも具体的な手法だと思いました。

最終的にこの本では「自分で自分を愛せるようになり、他人を愛せるようになる」方法が書いてあります。キリスト教の引用も多いし魂という言葉もでてくるけど、僕としては理解して納得できるものでした。誰にでもってわけにはいかないけど、オススメしたい。当たり前ですがここで書いたこと以上にたくさんのエピソードやノウハウが載っています。

特に天使の観察はみんなができるようになったらとてもいいと思う。平穏とか落ち着きを手に入れられます。逆に、アクティブリスニングは大事だけど天使より優先度は低くていいのかな。話し手が「自分の話を聞いて欲しい」って思ってる時じゃないと意味がないし。数日前の日記「No.1キャバ嬢になりたい」で書いた後に気づいたことだけど、普段の会話って情報交換とか相手から意見をもらいたくてしていることの方が多いよね。意見を求めているのにアクティブリスニングされたら話し手はイライラするわ(笑)

ん、こんなところかな。アイデア出しにつながる話はまた今度書きます。