ストーリーの登山と下山 / 『ゼロ・グラビティ』『セレステ』『銀色の髪のアギト』『ソーシキ博士』

何年か前に『ゼロ・グラビティ』という映画を見たときにネットのレビューだったと思うけど読んだら「この映画は本来は映画にしにくい帰宅を描いた映画だ」という話だった。そこから色々と考えたことを書きたい。

「行きて帰りし物語」

物語の構造の中で「行きて帰りし物語」というスタンダードな型がある。主人公は最初は平穏な日常をすごしているが、あるきっかけで、冒険に出かけて非日常を過ごし、成長して帰ってくる。

ほとんどのお話がこの形である。そのとき、話としてワクワクするのは冒険に進んでる最中であって、帰宅は面白くない。山登りであれば登山は楽しいけど下山は楽しくない、みたいな。

でも『ゼロ・グラビティ』はその下山がメイン。
宇宙飛行士のライアンが、宇宙の船外活動をしているときにデブリ(宇宙ゴミ)が飛んできて、ライアンが宇宙に放り出されるところから映画がはじまります。そこからどうやって地球に帰還するのか!?という映画。本来は映画になりにくい下山(帰宅)をストーリーにしてて面白い、という考察でした。しかも主人公のプライベートにも色々あって、帰宅する動機がゆれるんですよね。それが面白い。

僕はこの映画好きです。途中で「それ無理やろ」っていう宇宙漂流をしますが、そこはフィクションとして目を瞑って(笑)映像がまずすごいですし、ラストがほんの短いシーンで終わるのも好き。

余談ですが、『ゼロ・グラビティ』は邦題で、原題は『グラビティ』。原題の方がストーリーの本質ついてると思う。単なる地球の重力っていうだけじゃない意味が感じれて好きです。ゼロが付いてるほうが宇宙っぽいけどさ。

そして、ストーリーの登山と下山のことを考えるようになった後に良いなと思ったゲームと出会いました。

ゲーム『セレステ』

『セレステ』というゲームで、簡単に説明するとマリオみたいに右へ進んでいくアクションゲーム。
内容はセレステという雪山を女の子が登りながら、過去のトラウマと向き合うみたいな、ドット絵のかわいい絵柄ですが難易度はかなり高いです。2段ジャンプとかすごい駆使するし、タイミングを逃すと即死する、何度も死んでクリア方法をさぐるみたいなタイプの骨太難ゲー。僕はこれのプレイ実況動画を見ました。

ニンテンドースイッチでプレイできます。

で、ゲームは登山がテーマで、ラストステージは山頂を目指して進んでいって、最後頭頂部に到達したらクリア。

僕的に良かったのはその後で、クリアしたからスタッフロールになるんですが、同時に主人公が下山する様子が流れるんです。
下山だからラストステージから最初のステージまで逆に戻ってく順番で各ステージを見せられて「あー、こんなステージあったなー」ってプレイヤーが思い出す。そして道中で出会った仲間と主人公が再会したり、かつて敵だったキャラと一緒に下山したりってシーンが入ってくる。それまでプレイしてきた思い出も積み重なってるから思わず泣いちゃう。

これは、文字通りの下山という意味とストーリーのピークを過ぎた後という意味での下山を合わせた意味で下山をエンドロールに持ってくることで、プレイヤーが余韻に浸る時間にしていて素晴らしい演出だと思いました。

下山までプレイさせられるとモチベーションが上がらないですから。
プレイはワクワクして指を動かして能動的に活動したいから、登山。
下山は余韻に浸る時間。

これに対してミスってるかなと僕が思った映画がこちら。

アニメ映画『銀色の髪のアギト』

注意:映画のネタバレあります。

異世界のSF作品で、主人公のアギトは身体能力の凄い男の子で、アギトが頑張って悪者をやっつける話。SFとして色々と設定はあるんですが、僕はあまり好きになれなかった。

後半、悪者がヒロインをさらって、アギトが悪者の本拠地に乗り込みます。このときヒロインの名前をめっちゃ連呼するんですよね。「トゥーラーーー!!」って。
ヒロインと悪者のシーン→
アギト走りながら叫ぶカット「トゥーラー!!」→
ヒロインと悪者の会話のシーン→
アギト走りながら叫ぶカット「トゥーーラーーー!!」→
ヒロインと悪者のシーン→
アギト走りながら叫ぶカット「トゥーーラーーーーーー!!」

みたいな繰り返しが何回もあるんです。くどいよ。ずっと走りながら「トゥーラー!」って言い続けてる。ヒロインは全然ちがう場所にいるのに。聞こえないのに。主人公バカなの?いや、主人公の想いが爆発してるシーンだと思うんですが。

それは置いときまして、この悪者が山の中にある基地に逃げ込みます。ストーリーの登山と下山の具体例がまた本当に山登りのストーリーなので紛らわしいですが、アギトはヒロインを助けるために爆速で走って登山します。

そして地下の基地で悪者と対決。なんとか倒して、ヒロインを連れて下山しようとしたら山が噴火!!溶岩が流れてきたり火山弾が飛んでくるなか、アギトはヒロインをお姫様抱っこして飛んでくる岩を避けながら爆速で下山します。

僕がこの映画を見たときがそこそこ大人だったからか「悪者を倒したあとだし、無事に下山するでしょ?」って感じに見ちゃったわんですよね。全然ワクワクしなかった。もう大きな問題は解決しちゃってる。そのあとのピンチはなんか大変そうに見えなかったんです。

だから、噴火シーンをもっとピンチにするなら、悪者は倒してない状態でヒロインを抱っこして下山しようとしたら敵もくるし噴火もするしで、主人公はヒロインを守りながら火山弾を避けながらボスも倒しながら下山する、くらいしたら良かったかなー?とか考えました。
そうすればその山から帰るというシーンも(ストーリー上の)登山になったかな?

どうでしょう。いや、下山しなくていいんじゃないかな。山のてっぺんで、噴火の中ボスと一騎打ちして、倒したらお姫様抱っこして、うまいことカットを入れてヒロインと一緒に帰宅でいいんじゃないのか?

たぶんアクションシーンとして、爆速で山をおりながら火山弾を避けるっていうのがしたかったと思う。そのシーンはカメラワークもやってたしアクションがんばってた。でもボスと一騎打ちのシーンでアクションすごいことやれば良かったんじゃないかなー。

と勝手に思いました。

下山シーンは盛り上がらないから、カットするかエンドロールにするか工夫がいるよねという話でした。

ソーシキ博士

余談ですが、セレステの実況動画はソーシキ博士という人のを見ました。この人のチャンネルすごい面白かったし、ソーシキ博士はアニメ作家でもあったのでアニメ作品も作られててそれも面白かったです。

でも鬱か何かになってしまって、前々から気難しかったし、メンタル弱いのかなって思ってて、だからソーシキ博士に共感するリスナーもたくさんいたんですが、それである日忽然とネットからいなくなってしまいました。TwitterもYouTubeチャンネルも消してしまって、ソーシキ博士の動画も見返せなくなってしまいました。

本だったら、作者が死んでも出版社が倒産してもファンの手元には物体として本が残るけど、YouTuberとかはチャンネルが消されたら一瞬で全部見れなくなる。BANだったりチャンネル主本人が消したり。その点がデジタルは怖いというか、儚いなと思いました。

ソーシキ博士も、いくつかは雑誌の連載コラムあるけど。博士のTwitterの言葉とかすごい好きだったのに。もうソーシキ博士の動画を見返せない。物理的に残らないってすごいあっけないなって思いました。

と、ここまで書いてソーシキ博士を検索したら、先月インスタライブしてたらしい!!生きてた!?良かったよ〜泣

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