スマホ脳
数年前に『スマホ脳』という本を読みました。
スウェーデンの精神科医が書いた本で「人がスマホやSNSに依存するのはなぜか」というのが人類の進化の歴史や脳科学から解説された本です。その中にあった「期待への快感」が演出と関係あると思っていたことがあるので、ここにまとめてみます。数年前の読んだ記憶をもとに書くのでこの本の通りにはなってないです。詳しく知りたい方はぜひ本を読んでください。
良いことがありそう、で興奮する脳
人の脳は「良いことを実際に体験した」ときよりも「これから良いことがありそう」というときのほうが興奮する。アドレナリンだかドーパミンがでる。
進化的な解釈をするなら、人がお猿さんだったころに「あの山に美味しい食べ物があるらしい」という話をきいて「行ってみたい!」と興奮して食べにいった猿が生き残ったから、そういう脳の人が多いという説。新しい情報に対して、実際に行動を促すように脳が興奮させるのだ、という解釈。
未来にポジティブな猿が生き残った説。
(逆に、ネガティブなことを多く記憶していた猿が危険を回避して生き残ったから現代ではネガティブ思考な人が多い説というのもありますけどね)
アプリの通知
スマホを使っている人の脳波を調べると、「あなたの投稿にイイねがつきました」という通知が来たときが1番興奮しているそう。その通知を見て、SNSアプリを開いてイイねがついているのを実際に確認するときには、興奮はややおさまっている、という心理学の実験があるそうです。
イイことがあったことよりも「イイことがあったよ」と伝聞されたときのほうが脳的に興奮する。らしい。
麻雀の聴牌(テンパイ)もそう
この話を友人にしたら、「僕も、麻雀をしてるとき、聴牌ってるときが一番興奮しますね」って。聴牌というのはあと一歩で勝ちになる状態のこと。
麻雀で役が完成して勝ったときは、興奮と同時に安堵の気持ちが出てるかも。とりあえず勝ちがはっきりした時が興奮のピークではない。
ソシャゲやパチンコ
あと本書で紹介されてない例で僕が思いついたのはパチンコとソシャゲ。
ソシャゲのガチャでは、レアなアイテムが手に入るときに、ゲットの前に確定演出という演出があったり、パチンコだと次に大当たりになりやすくなったことを伝える確変という演出があるそう。
どれも、アイテムゲットや大当たりの前の段階で「いいものがもらえそう」という予告の演出をしていて、遊んでいる人はその予告が出た時が一番興奮するし、もう一度やりたい、あの興奮をもう一度味わいたいとなってプレイする。らしい。僕はどっちもやらないので、伝聞情報ですが。
SNSの通知の怖いな話
SNSの話に戻って、その本に書かれててちょっと怖いなと思ったこと。
いいねの通知が来た時が一番興奮するので、運営はこの通知の回数を分けるということをしているらしいです。
「イイねが10個つきました」という通知を1回するよりも、「イイねが5個つきました」という通知を2回にわけたほうが、2回興奮して、2回アプリにアクセスしてもらえる。こうやって通知の数やタイミングを操作してアプリに何度もアクセスさせたり、興奮する回数を増やしているのだとか。
アプリの通知がきたら意識してなくても脳が興奮して、アプリを開いてしまう。どんな行動をとるのか通知によって操作されている状態。本ではこのことを「SNSがあなたの脳をハッキングしているのです」的な言い方までしてました。怖いですね。そりゃ依存もするよ。
『BLEACH』の卍解(ばんかい)
予告演出の点で一番優秀かも、と思ったのがジャンプの漫画『BLEACH』の卍解です。
知らない人に簡単に説明すると
主人公たちは死神という存在で、日本刀でモンスターと戦う話です。死神は正義の味方です。死神たちが持っている刀にそれぞれ特殊能力があって、氷を出すとか、炎をだすとかありまして、その刀の最終奥義をだすときに、「卍解!」と叫んで、刀の形を変えるというのがあります。卍解状態になってから最終奥義の技を出すのです。
ジャンプで読んでいると、敵が強くて苦戦したときにその週の話のラストページで死神が「卍解!」と叫び、刀の形が新しくなる。ブリーチはたくさんの登場キャラがいて、それぞれが始めて卍解をお披露目すると「どんな能力なんだろう!」と読者は来週のジャンプを楽しみに待つのです。
僕は連載当時に読んでたので実感があるんですけど、卍解で刀の新しい姿(死神の衣装も変わったりする)が出た時はすごい興奮しました。ブリーチはキャラデザとか刀のデザインがかっこいいし、技の名前も和風でかっこよかった。敵も味方もかっこよかったし、それが何十人も出てくるから技を出すたびにかっこいーって思ってました。あれ、脳が興奮してたんだろうなって。
『トリコ』のメニュー
あと好きだったのは同じくジャンプ漫画の『トリコ』。これは料理がテーマの漫画で、いろんな食材を探しに冒険したり悪者とバトルしたりなんですが、「次の食材はこれを取りにこう!」と話がはじまると大きなコマで「メニューNo.2 虹の実」というタイトルが出るんです。高級レストランのメニューみたいな書体で。出るタイミングも1ページ目と決まってるのではなく、会話の流れとか、シチュエーションを見せたあととか、盛り上がるタイミングでメニュー名がでて、これから冒険が始まるぞって感じがしてワクワクしたのを覚えています。これも予告に興奮してたのかも。
映画の予告編
というか、これが当てはまるのって映画の予告編を見た時かも。映画そのものよりも予告編のほうが興奮するパターン。「きっとすごい映画なんだ!」ってすごいストーリーを期待して、実際に見たらそうでもなかったなって経験ありませんか?期待を膨らましすぎたなって。しかも想像だから自分好みのストーリーを予感してたりね。
と言いつつ、僕は新しいストーリーに出会う衝撃を味わいたいので、最近はタイトルだけ聞いて面白そうと思ったやつは予告編も前情報も何も触れないようにして見てます。
追記、SNSと距離を置く
書いたあとに思い出しましたが、僕はSNSの通知を基本的に切ってます。通知が来ると見たくなってしまうから、自分の生活が振り回されちゃうんですよね。SNSは自分から能動的にアプリを立ち上げて見てます。あと、たまにSNSが気になりすぎる時はまめにログアウトするようにしてます。ログインの手間をかけると、ちょっとアプリ立ち上げる気が減る。そうやってSNSと距離をとるようにしてます。
