仕事論・創作論
2025年3月21日

「数字でとらえると本質を見失う」という話 / 『修行論』

「数字でとらえると本質を見失う」という話を書きたい。

これは『修行論』に出てきた話で、すごい面白かったし僕なりに解釈した結果、心の落ち着きを得たという話です。

武道家・批評家・大学名誉教授などの肩書きの内田 樹(うちだ たつる)さんの著書『修行論』。(こちらの記事でいちど紹介

どんなことが書かれていたか、僕の要約を書きます。

『修行論』「身体を鍛える」の違和感、数値表現の限界

「身体を鍛える」という言葉に違和感がある。

「身体を鍛える」という場合ふつうは数値的に能力を測る。タイム、距離、腕の太さ、肺活量、などを測る。その数値が増えれば能力があがったと解釈する。

しかし例えば、重い物を持ち上げるトレーニングをしたとき、訓練をしているうちに身体の使い方が上手くなり、重心移動や腰の回転や肩甲骨の動かし方の工夫で負荷をかけずに重い物が持てるようになったとしたら、余分な筋肉はむしろ落ちてスレンダーになる。重いものが持てるようになったのに筋肉量は減ったことになる。

筋肉量の数値にだけ注目するとこれが理解できない。

強くなりたいアスリートたちは「何キロ走ると心肺機能がどれほど向上するか」「どのウェイトトレーニングをすれば筋力がどれほど増強されるか」など、計測機器の数値が身体の変化だと信じて、努力と成果の間に単純な一次方程式をつくりたがる。人間の身体をシンプルなメカニズムとしてとらえてしまうのは深刻な欠陥であり、身体のことを本当に理解することが難しくなる。

「私は私の身体を支配している」という全能感

ダイエットをする人は体重の増減に一喜一憂する。「自分の努力がただちに数値的に表示されること」ということはダイエットをする人たちの最大の愉悦である。

なぜなら数値的に表示されると「私は私の身体を支配している」という全能感を得られる。全能感が愉悦であり、そしてダイエット中毒になる。

バレエのピルエット

バレエ教室で自主練をさせると若い生徒たちはすぐにピルエット(片足立ちして回転)をはじめる。これは世界中のバレエ教室で見られる光景らしい。トレーニングは他にいくらでもあるのにピルエットをやる。なぜなら回数が数えられるから。回数が数えられるということは、昨日の自分と比較できるし、他人と比較すれば優越感を得ることもできる。

しかし本当の意味でのバレエの美しさの構成要素は無限にある。肩甲骨や股関節やインナーマッスルの使い方などだ。しかしそれらは数値化できない。
回転数だけにとらわれると「バレエとしての身体表現とは何か」という答えの見えない問いから逃げることになる。

これはバレエに限らずあらゆるジャンルでおこる。

数値で見れないものを恐れる

数値で見たいという欲求が強いと、身体の使い方を変えることを恐れるようになる。

野球のスイングや水泳の泳ぎ方など、フォームを変えることに選手自身が抵抗することがあるがそれは、身体の使い方を変えたら今までの数値計測では成果が測れなくなることが恐ろしいのだ。努力の成果が数値で分からないことに上手く適応できない。

トレーニングや教育の中で数値の比較をつづけると、人々はタイムや距離や重さを計ることに夢中になってしまい、数値に置き換えれない身体能力は存在しないと信じ込んでしまう。

「鍛える」はすでに確認された能力を数値的に増大させること。しかし人間の心身の能力を爆発的に開花させようと思ったら、それではいけない。

「鍛える」とはハードディスクの容量を増やすこと、潜在的な能力を開花させるというのはOSのバージョンアップすること。
ハードディスク容量をいくら増やしても、古いバージョンのOSを使っているときは次世代OSで何ができるのかを想像するこは不可能である。

読んでみて

最後のパソコンのOSの例えに痺れました。OSのアップデートしたい!どうやるか分からんけど!(どうやるか分かるものではない!)

しかし数値に囚われるのは確かにあるよなーって思いました。

数年前に筋トレを始めたんですが、最初の一年は体重が1キロも変わりませんでした。でもこの本を読んでいたので慌てませんでした。

自分の体を触ると脂肪が落ちていて、筋肉がついているのが実感できました。体重は変わっていないけど身体の中身は変わっていたのです。体重という1つの数値にとらわれていたらこの変化は気づけないでしょう。

世の中は数字で溢れてると思います。

SNSのイイネの数も気になってしまいますが、そのイイネがどれくらいの気持ちでイイネしたのかは分かりません。軽い気持ちでも人生を変えられるほどの衝撃でも同じ1イイネになってしまいます。むしろ軽い気持ちのイイネの方が集まりやすいので、本当に価値のある投稿かどうかはイイネでは測れないでしょう。価値ある投稿がなんなのかという議論もありますが、イイネの数がすべてではないでしょう。

YouTubeの再生回数だって、見た結果つまらなくても1再生になります。だから炎上で再生数を稼ぐYouTuberもいます。再生数が伸びている動画がよい動画とは限りません。

テレビの視聴率だって見た感想までは数字にならないので、面白い番組かどうかは視聴率では測れないと思います。体重と体脂肪率みたいに、細かくアンケートをとっていけば本当の人気具合が分かるかもしれませんが、おそらく多くの人がその手間を惜しんで、単純な数字だけで考えようとしているのでしょう。

なので最近では、そういう数字に一喜一憂しないように心がけています。

自分のSNSがバズらなくっても、、、自分の動画の再生数が伸びなくっても、、、本当は数字が気になるけども!!

次回予告

「とはいえ数値でとらえる万能感って有効だよね!」を書きます(笑)

それでは。

『修行論』Amazon

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