前回の続きです。
だろめおん先生の制作現場 その3
こちらの動画で、「漫画家にはどの力が一番必要?」に対して「1個だけ必要って話になると、辞めないこと」と答えるだろめおん先生

これはそうだと思います。前に「フリーランスを続けるコツは?」って聞かれて僕が答えたのも「辞めないこと」でした。仕事として成功させるコツとは違うけど。大前提として続けること。
その次に答えていたことについて今回語りたい。
漫画に大事なのは読みやすさ
引用
「この紙面の1枚の紙に対して、どれだけの情報量をそこに載せて、その情報をすばやく読者の脳に届けるか。そのために読みやすくするんです。文字の配置を考えたり」
「めちゃめちゃデータが多いのに、めちゃめちゃパッと入ってくるっていうのが良い漫画だなって思う。
良い漫画の条件、これはかつてのジャンプ編集長の鳥嶋さんも「漫画は面白いかどうかではなく、分かりやすいかどうかだ」的なことを言ってました。
ストーリーとかメッセージがスッと伝わるか。おそらく本当はすべての漫画が面白いはずなんだけど、それが伝わらないと「つまらない漫画」って評価されてしまう。だからコマ割りとかセリフの内容や配置などなどで工夫が必要。
でもそのことを「データダウンロード速度」って表現したのがすごい面白いし、伝わるかどうかの評価軸をより明確なものにした気がする。じっくり読めば分かるっていうのをどれくらい速くするか、そのための工夫をどうやるか。
たとえば、大きな吹き出しだと大声でしゃべってるとか。吹き出しの形でもギザギザだったら叫んでる表現とか。あとコマ割りの周りを黒色にすると過去の話を表現しているっていうパターンありますよね。絶対じゃないけど。これは漫画リテラシーが必要になってるくるけど、慣れてくると1つ1つ説明されなくても理解できるようになる。ダウンロード速度が上がる。
速度って表現があるなら、データの圧縮も出来るんじゃないか?
たくさんの画像を1枚1枚送るよりもzipにまとめたほうが速いみたいに。情報の圧縮ができる。吹き出しの形の話も圧縮って言えるかも。
僕は漫画でこういう表現の工夫あるのがすごい好きで、効果音も内容にあわせてフォントが違ってるとか、コマ割りの線もただの直線じゃなくってグニャグニャの線にするとか。
映像にもダウンロード速度の上げ方があるじゃん
映像では右が強い話
さてさて、僕の職業でもある映像の話を。
先日、コマ撮りの人たちと飲んでる時にカメラワークについての話がありました。
映像では画面の右側が力のあるものや未来を表現するゾーンで、画面の左側が力の弱いものとか過去を表すっていうセオリーみたいのがあります。
これはおそらく西洋の舞台演劇からの流れでそういうのがあって、その大元は英語を書くときに左から右へ書いていく流れから出来上がってると思う。物語はつねに右に進んでいくから、未来が右というわけ。
日本の漫画だと逆で
だたし、日本の漫画はセリフが縦書きで右から左に読むからページも右から左に進んでいくので、ジャンプとかの主人公たちは基本的に右から左に進んでいく絵が多いし、敵は左から右を向いているというパターンが多い。
たとえば、ワンピースのアラバスタ編でルフィたちとクロコダイルたちが対峙する表紙は主人公たちが右側にいて左むき。
鬼滅の刃でよく使われてるイラストも主人公の炭治郎たちは左むき。

そして漫画からアニメ化されると映像のなかでも左にすすむ絵が多くなってしまうので、映像における右左の表現の定理は一概に言えなくなってしまってるんですが、とりあえず西洋的に言うと右の方が未来の表現であり、右の方がパワーが上というのがあります。
ちょっと複雑に補足説明してしまいましたが、飲み会で「この映画のこのシーンが登場人物の上下関係をカメラワークの中でうまく描いていた」という話を聞いたんですね。
その時にだろめおん先生のダウンロード速度の話が僕の中でガッチャンコして、映像表現でも速度をあげるって色々あるよなって気づきました。
映像でのダウンロード速度アップ方法
たとえば、声にエフェクトをかけてホワワンとさせて心の声にしたり、セピア色の画面ならら過去の表現だったり、カメラアングルが斜めになると不安とか緊張の表現になったり、カットの繋ぎ方や音楽の使い方でも色々と表現方法がある。より複雑になると時間を巻き戻すみたいな表現もありますもんね。キュルキュルって音と同時に戻すみたいな。
これらを駆使すると1つ1つを丁寧に説明しなくても、複数の手法を同時に使って、視聴者の目と耳の両方から複雑な情報を圧縮して伝えることができる。
これは文字しかない小説よりも、画面と音と時間軸をもつ映像のほうがより複雑な表現ができる、ってことにならないかな。
突然小説を引き合いに出しちゃったけど、もともと僕は小説が好きで、ストーリーを書く小説はすべてのエンタメの元となると思ってて(小説から漫画化、映画化、舞台化するからね)。あと小説は文字っていうシンプルなツールのみで何かを伝えるっていう、そのシンプルさもすごいと思ってます。だから小説を崇拝してるところがあるのですが、映像には映像の良さがあるなと思ったのです。その良さってのが映像ならではの複雑な手法を使ってデータ圧縮してダウンロード速度をあげれるということ。映像をつくるならそういう工夫をすべきだなと。
ま、僕は長くて重い小説が大好きなんで、小説にダウンロード速度なんて期待してないですけどね(笑)あ、でも読みにくい小説はダメかな。圧縮まで意識しなくていいけど、読みやすさは大事ですね漫画でも小説でも映像でも。
今日はこんなとこ。
おまけ:好きな作家
今回の話をする上で、好きな作家を書く。
漫画の工夫という点で、板垣恵介先生を一番尊敬しています。『刃牙』シリーズと『餓狼伝』が漫画の表現領域をひたすら開拓してると思ってます。餓狼伝では殺気で空気がゆがむって表現をし、刃牙の親子喧嘩編ではグチャグチャな文字の効果音っていう言葉にならない音って表現がでてきます。必見。
話を伝えるって意味では『暗殺教室』の松井優征先生がすごいと思ってます。何かを伝えるためのテンポとか前振りが上手い。ページをめくって衝撃的なことを伝えるとか。とても読みやすい。
小説で言うと京極夏彦先生の小説は読みやすい。登場人物がたくさん居て会話をつづけてても誰のセリフなのか分かるように書いてる。すごい。
『鵼の碑(ぬえのいしぶみ)』を買ってるけどまだ読んでない。





